自民党と日本維新の会は19日、「令和8年度税制改正大綱」を決定した。暗号資産取引への申告分離課税導入が明記され、長年の業界要望が制度上示された形だ。一方で、その適用範囲は限定的となる見通しで、すべての暗号資産取引が対象となるわけではないことが明らかになった。
大綱では、分離課税の対象となる資産を「特定暗号資産」と定義している。具体的には、暗号資産取引業を行う者に対し、金融商品取引業者登録簿に登録された暗号資産を譲渡等した場合に限り、分離課税が適用される方向性が示された。この定義に該当しない銘柄や取引形態は、新制度の対象外となる可能性がある。
この定義に基づけば、海外取引所での暗号資産取引や、DeFi(分散型金融)を通じた取引は、「特定暗号資産」に該当しない可能性が高い。これらの取引は分離課税の対象外となり、従来通り最大55%の総合課税が継続される見込みだ。
さらに、分離課税の対象外となる暗号資産取引については、総合課税の対象となるが、譲渡所得の特別控除、長期保有優遇措置(2分の1課税)、他所得との損益通算が適用されないことが明記され、課税が厳格化される。分離課税の導入と同時に、暗号資産取引の課税区分が明確に線引きされる形となった。
一方、条件を満たす「特定暗号資産」については、株式等と同様の課税方式へ転換される方針だ。税率は一律20%(所得税15%、住民税5%)となり、現物だけでなくデリバティブ取引やETFも対象となる。また、損失が出た場合でも、翌年以後3年間にわたり繰り越して控除できる仕組みが創設される。
本改正の適用時期は、金融商品取引法等の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日からとなる。令和8年度(2026年度)税制改正に関連して法案が2026年中に成立・施行されれば、最短で2027年1月1日からの適用開始が見込まれる。実際のスケジュールは国会の動向次第となるため、今後の推移を注視する必要がある。
今回の大綱は、国内の一般的な投資家には朗報だが、Web3の核心であるDeFiや海外プロジェクトへの投資家には冷水を浴びせる内容とも読める。国内と海外で税制上の扱いが明確に分断される可能性があり、投資行動や資金の移動に大きな影響が出るだろう。自身の取引が優遇対象か否か、今後の法整備を慎重に確認する必要がある。
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